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グローバル・グロース株式の投資機会

本稿では、グローバル・グロース株式への投資アプローチや新たな投資機会とトレンドの展望、持続的な利益を上げている企業に投資することの重要性についてご説明します。

執筆者

Laura Granger, CFA
インスティテューショナル・
ポートフォリオ・マネジャー

George Fontaine, CFA
シニアIPM
リサーチ・アソシエイト

概要

グローバル・グロース株式投資は過去20年間に大型株で年率9.4%のリターンを上げており、グロース株が実りの多い投資スタイルであることを示しています1。堅調の要因は長い期間の中で様々ありますが、共通して言えるのは、長期的に見るとマルチプルの拡大や配当ではなく、利益が株価の大部分の要因であるということです。マクロ要因などの影響によりボラティリティが短期的に高まった期間は何度かあったものの、リターンを分解すると長期的な株価パフォーマンスの大部分は利益によって説明することができます。MFSは、ファンダメンタルズが利益とキャッシュフロー獲得の原動力であり、ひいては長期的に株価パフォーマンスを押し上げる要因であると考えています。そのため市場サイクルを通じて平均以上の利益成長を維持できる企業の特定に注力しています。そして、ボトムアップのファンダメンタルズ・リサーチにより、過去5年間に生じた大局的テーマをいくつか特定しました。株式投資ユニバース内の複数のセクターにまたがって大きな影響を与える重要な変化が市場で起き始めていると、我々は考えます。

本稿では以下について論じます。

  • グローバル・グロース株式の銘柄選択に対するアプローチ
  • 新たな投資機会とトレンドの展望
  • 持続的な利益を上げている企業に景気サイクル全体を通して投資することが重要と考える理由

グロース株へのアプローチ

MFSはファンダメンタルズに重点を置いたボトムアップによる長期投資を行っており、ファンダメンタルズが利益とキャッシュフロー、ひいては株価の押し上げ要因となると考えています。

図表1は、MSCI ACWI Growth IndexとMSCI ACWI Indexの長期リターンの要因分析を示したものです。比較のためにMSCI ACWI Value Indexのトータルリターンも示しています。2004年以降のグローバル株式の長期リターンを分解すると、短期的にマクロ要因などの影響を強く受けたと思われる期間も何度かあるものの、株価リターンの大部分が利益で説明できることをデータは示しています。株価収益率(PER)は時間の経過とともに変動するためリターン全体の一部を説明するにとどまる一方、配当はそれより若干大きい部分を説明しています。

MFSは長期投資を旨とし、お客様に安定したリスク調整後リターンを提供することを目標としています。また、成長の一貫性を重視し、平均以上の成長率を長期的に達成できると考えられる質の高い企業を特定することを目指しています。平均以上の安定的な成長を達成できる企業にはいくつかの共通点があり、MFSはこの共通点を強靭なリサーチを通じて特定することを目指しています。これら共通点の一部は以下の通りです。

1) 成長市場における高い競争優位性

2) 他社にない製品やサービス

3) 高い参入障壁

4) 価格決定力

5) 利益率を向上させる能力

6) 力強い長期的テーマによる後押し

グローバルな長期的テーマを理解することは、企業の長期的な収益成長の可能性を判断する一助となり、時にはマクロ経済の逆風を克服することにもつながります。また企業の利益水準とその持続可能性に焦点を当てた調査は、市場トレンドの大きな変化を捉えることにつながります。企業に恩恵をもたらし得る需要の大きな長期的変化を先取りすることが、投資家に価値をもたらすこともあります。現在、非常に力強い長期的成長テーマが始まったばかりであり、そのテーマは複数のセクターの投資展望を変化させ、新たな事業機会を創出するものとMFSは考えています。これらのテーマは幅広い企業に恩恵をもたらすものです。以下に、こうした有望な投資機会がある分野についてまとめました。

グロース株の有望な投資機会はどこに?

構造的追い風と景気循環的追い風の両方が吹いており、次の景気サイクルで広範な業種にわたり利益を押し上げると考えられます。いくつかの市場は拡大しており、新たな投資機会が過去10年間に見られなかったようなペースで発生しています。

  • AI(人工知能) - AIは急速に進化しており、様々なエンドマーケットで投資を促しています。現在はAIの搭載を可能にするインフラの構築初期段階にあり、ソフト ウェアやアプリケーション開発の新しいリーダーと見込める企業を特定するのは時期尚早と考えています。今のところ、AIや大規模言語学習モデルを可能にするGPU(画像処理装置)分野では1社が独占的地位を築いているようです。AIが事業のあらゆる分野にどのような影響を与えるのかを判断しようと企業が投資を増やすなかで、こうした半導体需要は主要なハイパースケーラー(100万台以上の巨大規模なサーバーリソースを保有する企業)から他のエンドマーケットへと拡大し続けています。AIのすそ野が広がるに伴い、他のサプライヤーにも機会が生まれつつあります。半導体の需要に循環的性質があることは認識していますが、エンドマーケットとエンド用途の拡大が、より長期にわたる成長を支えています。AI構築に関連する設備投資は、データセンター、メモリ、半導体設備、電力供給など様々な分野で急速に拡大しています。
  • データセンター - 世界最大級のテクノロジー企業の一部は、膨大なデータのスト レージおよび処理能力を必要とするAIを巡って巨額の設備投資に乗り出しています。米国のハイパースケーラーは、会社の業績見通しに基づくと、AI関連の需要を支えるために設備投資を大幅に増やすとみられます。世界のデータ使用量はますます急速に増加しています。AIに必要な大量のデータとその処理はワークフローのクラウド化を加速させています。AIへの投資は、メモリやデータストレージ、そしてそれらの部品を製造する企業への需要を高めています。新しいAIデータセンターの処理容量に対する需要の増加は、産業セクターの様々な企業にも直接影響を与えています。
  • 半導体と半導体装置 - 半導体の高度化と複雑化は長年にわたって半導体産業に恩恵をもたらしてきました。この堅調な需要に、AIというさらなる追い風が吹いています。関連銘柄の多くは妥当なバリュエーションを維持しています。また、 AIインフラの構築に向けてより多くの半導体部品が必要とされることから、今後数年間は大幅な成長が続く見通しです。一部の国が国家安全保障に不可欠とみなされる知的財産や半導体の保護に動くなか、特定の製品リスクがより大きな問題になりつつありますが、半導体メーカー株の保有はこのリスクを軽減する点で優れたエクスポージャーとなり得ます。
  • 電化とエネルギー源 - 電力需要は長年にわたりほぼ横ばいで推移してきましたが、長期的な拡大期に入りつつあると考えられます。電力需要は、データセンターの拡大、不随的AI需要、リショアリング、製造活動、電気自動車への移行、燃料源の移行など多くの要因により、加速度的に増加しています。電力需要は今後5年間で約3%増加するとみられ2、データセンターだけで2030年までに米国の電力需要の9%を占める見込みです(現在は4%)3。こうした増加ペースにより、需要は供給を上回り始めています。今後は、電力効率、電力管理、および電力会社の電力供給能力が非常に重要になります。それが発電と送電の両方への投資を促進し、様々な工業部品メーカーやシステム企業に利益をもたらすでしょう。送電網は改良の必要があります。世界的な電力需要増加のなかで、大手AI企業は電力需要の高いデータセンターの新設が困難となっています。米国の多くの地域は余剰電力がなく、発電と送電は(容量拡大に要する)リードタイムが長いため、大きな制約となります。停止していた原子力発電所が再稼働しつつあります。代替エネル ギー源への需要はある程度高まる見込みである一方、信頼性には欠けます。独立系発電事業者は、代替エネルギー源による発電能力と価格設定力がある点で妙味があります。一部の地域では原子力への回帰が進んでいますが、天然ガス企業も米国の豊富な供給の恩恵を受ける可能性があります。
  • 熱管理/冷却 - データセンター需要が高まるにつれて、大量の電力を消費し大量の熱を発生させるデータセンター施設で水冷/空冷能力を高める必要性も高まっています。データセンター構築の加速、ラックあたりの電力密度上昇、サ ステナビリティへの配慮から、水冷ソリューションへの移行が進んでいます。 HVAC(暖房・換気・空調)関連企業も、こうした電力需要を受けて従来を上回る成長を遂げるとみられます。
  • リショアリング、オンショアリング - 世界中の企業が製造拠点を自国に近づけ、サ プライチェーンのリスクを軽減しようとしています。投資不足が10年間続いた有形資産への設備投資が回復しつつあります。再工業化、リショアリング、電化、デジタル化の流れは需要を促進する強力な要因です。この流れは資本財や素材分野の様々な企業に恩恵をもたらしており、その多くは前述したテーマからも恩恵も受けています。
  • 航空宇宙 - 設備投資不足により、機体の老朽化が看過できないほどに進んでいます。また、航空会社はエネルギー効率を高め、カーボンニュートラルを達成する必要があります。そのため、アフターマーケットや新型機への需要が再び高まっています。サプライチェーンの複数段階にまたがる製造の目詰まりで供給は制約されたままであり、需給はさらに逼迫しています。
  • インフラ - 米国では高速道路や橋梁、一般インフラへの投資不足が数十年間続き、これらの老朽化が改めて注目されています。連邦・州・地方の予算が大幅に増え、素材や資本財セクターの企業に対する需要が再び高まっています。
  • オルタナティブ資産運用会社 - オルタナティブ資産運用は金融サービス分野で大きく成長している数少ない分野の1つです。この業界は一握りのプレーヤーが支配的地位を占め、取引構造の特殊性から高い参入障壁があります。企業は新たな戦略を打ち出し、資金調達を増やし、手数料収入の伸びを加速させています。市場は新たな地域や個人投資家/富裕層向けに拡大しています。
  • ライフサイエンス・ツール - 新型コロナウィルスやバイオテクノロジー企業の資金調達難によりライフサイエンス・ツール企業の多くが直面していた短期的な逆風は収まりつつあると考えています。需要は底を打っており、売上が加速すれば利益率が拡大する可能性があります。研究開発分野のイネーブラー企業で、製品サイクルの中断が少なく長期的に利益を伸ばすことができる質の高い企業の株式を選好しています。

結論

ここ数十年で最もダイナミックな投資サイクルが幅広い分野で始まったばかりであると考えます。こうした変化は様々なセクターに広範な影響を与える見込みであり、非常に有望な投資機会を生み出しているとMFSは見ています。この変化に伴う投資支出は、本稿で特定した様々なテーマにわたって利益成長を促進する可能性が高く、様々なセクターの幅広い企業に有意な恩恵をもたらします。いくつかの市場が拡大し、また新しい市場が始まる中で、これら進化する市場で成功できると考えられる企業の特定に努めています。

グロース株は引き続き良好なパフォーマンスを提供できると考えています。しかし、すべてのグロース株が同じではないため、アクティブ・アプローチが長期的に有益であるとMFSは考えます。投資にあたっては、規律を保ち、企業の収益の原動力に引き続き注目する必要があります。歴史的に見ると長期的には企業利益が株価を動かしており、それは今後も変わらないと考えられます。市場トレンドは正常化しつつあるとみられ、株価はEPSに反応しています(ただし、株価とEPSの相関性は低下しています)。ファンダメンタルズの違いが株価リターンの違いの源泉です。リターンには引き続きばらつきが見られることから、ベンチマークで大きなウェイトを占める銘柄を中心としたアクティブ運用によって付加価値を提供することが可能です。業績予想が続々と発表され、それに株価が反応し始める中、銘柄選択が長期的なリターンに影響を与えることができるとMFSは考えています。

 

巻末脚注

1 出所:FactSet。2004年6月30日~2024年6月28日までのデータ。トータルリターン(外国源泉税控除後)はMSCI All-Country World Growth Indexの米ドル・ベースです。.
2 IEA (2024), Electricity 2024, IEA, Paris https://www.iea.org/reports/electricity-2024, Licence: CC BY 4.0。
3 EPRI. “Powering Intelligence: Analyzing Artificial Intelligence and Data Center Energy Consumption.” Electric Power Research Institute, Inc., https://www.epri.com/research/products/000000003002028905. 2024年5月28日発行。

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