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Big Mac*:債券の投資機会-クレジットのリターン要因を管理する

本稿では、足元のスプレッドが割高である中でも債券の見通しが引き続き堅調であると考える理由についてご説明します。

執筆者

Benoit Anne
マネージング・ディレクター
ストラテジー・アンド・インサイト・グループ

一部の投資家の間には、クレジット・スプレッドが債券の大きな逆風になっているとの認識があるようです。しかし、足元のスプレッドが過去の水準と比べて割高であっても、債券のトータル・リターン見通しは今後も堅調であるとMFSは見ています。トータル・リターンの主な源泉は、金利低下の影響、高いキャリー、潜在的なアルファの寄与など、スプレッド以外の要因にある可能性が高いためです。

グローバル債券の多くのセグメントでクレジット・スプレッドが割高に見えることは確かです。例えば、米国投資適格社債のスプレッドは現在約80ベーシスポイント(bp)で、5年平均の118bp を大きく下回っています(図表1参照)。80bpのスプレッドはZスコアの-1.16 に相当し、大幅に過大評価されていることが示唆されます1 。米国投資適格社債のみならず、現在多くの資産クラスのスプレッドが割高に見えます。10年間のパーセンタイル・ランクを見ると、投資適格社債、ハイイールド債、課税地方債、エマージング社債のパーセンタイルはゼロに近く、スプレッドは現在、過去の水準から見て非常に割高であることが示唆されています(図表2参照)。

   

良いニュースは、スプレッドが割高となることは珍しくないということです。スプレッドが割高であるからといって、必ずしも近いうちにスプレッドの大幅な調整が起きるというわけではありません。実際、過去を振り返ってみても、クレジット・スプレッドが長期にわたり割高に推移した期間は数多く見られます。調整要因がない限り、特に、クレジット・セクターへの資金流入など市場テクニカルが堅調であったり、リスク選好度が世界的に健全であれば、スプレッドは長期にわたって割高な領域にとどまることがあります(図表3参照)。

クレジット・リスクは、足元ではベータよりもアルファが重要となっています。現在のスプレッド水準を踏まえると、スプレッドの縮小がクレジットのトータル・リターンの主要因になるとは考えにくい状況です。こうした背景から、アルファの役割、すなわちアクティブ・アセットマネジャーが生み出す超過リターンの存在感が高まっています。スプレッドが狭いだけでなく、スプレッドの分散も過去の平均を大きく下回っています(図表4参照)。スプレッドの分散が小さい中では、銘柄選択によるアルファの獲得機会は縮小する傾向があります。こうしたときは、アセット・マネジャーの質と能力が重視されるときです。言い換えれば、スプレッドの分散が狭い環境は、運用能力の高いアセット・マネジャーが力を発揮する機会です。徹底した銘柄選択による運用プロセスとグローバルなリサーチ・プラットフォームは、現在のバリュエーション水準の下で付加価値を生むために最も重要な要素あると考えます。

こうしたスプレッド環境にもかかわらず、クレジットのトータル・リターン見通しは引き続き堅調です。利下げによる影響、魅力的なキャリー、そして潜在的なアルファが、今後1年間のクレジット・パフォーマンスの主な原動力となりそうです。足元の総利回りを考えると、当初の条件は良好に見えます。例えば、米国の投資適格社債の利回りは現在5.12%です2。これは、潜在的なインカム・リターンは過去の標準にならって上昇する可能性が高いことを意味します。そのためには、このインカム・リターンに、図表5にまとめたスプレッドと金利の動きからの寄与を加味することが必要です。利下げの影響を受けた金利低下と安定したクレジット・スプレッドのシナリオ下では、1年間の期待リターンは1 桁台後半となる可能性があります。

ベータを加味しない超過リターンは歴史的に高い水準で推移しており、債券におけるアクティブ運用の意義を裏付けています。Bloomberg US Credit Indexをベンチマークとするアセット・マネジャーの過去の運用実績を見ると、過去20年間に生み出されたアルファは年平均75bpと、相当に高い水準に達しています。アセット・マネジャーが利用できるアルファ獲得の手段は、銘柄選択からセクター配分、レラティブ・バリュー、イールドカーブ・ポジショニングなど多岐にわたります。米国投資適格社債の20年間のベータ・リターンは現在4.03%であり、75bpのアルファは大きいといえます。

総じて、債券のトータル・リターンの見通しは、主に金利低下観測と高いキャリーを反映して引き続き堅調です。ただし、スプレッドがパフォーマンスに大きく寄与する可能性は高くないと考えます。クレジット・リターンの源泉としては、ベータよりもアルファの存在が大きい環境にあると考えます

 

*「Big Mac」(「ビッグなマクロ経済」を意味します)は、世界の債券やマクロ経済環境に関するトピックを取り上げるグローバル債券レポートです。
 

巻末脚注

1 Zスコアは、標準偏差の単位の長期平均からの乖離を測定したものです。1Zスコア(過去平均か1 σ(標準偏差)の乖離)は典型として、過去のバリュエーションと比べて魅力的とみなされる水準を指します。反対に、-1Zスコアは割高とみなされる水準を指す傾向があります。

2 出所:Bloomberg。米国IG社債 = Bloomberg US IG Corporate Index。2024年10月29日現在データ。

 

出所:Bloomberg Index Services Limited. BLOOMBERG®は、Bloomberg Finance L.P.およびその関連会社(以下、総称して「ブルームバーグ」)の商標およびサービスマークです。BloombergまたはBloombergのライセンサーは、Bloomberg Indexのすべての所有権を有します。Bloombergは、本資料を承認もしくは保証するものではなく、本資料に記載された情報の正確性または完全性を保証するものでもありません。また、本資料から得られる結果について、明示または黙示を問わず一切の保証を行わず、法律で認められている最大限の範囲において、一切の責任を負わないものとします。

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当レポート内で提示された見解は、MFSディストリビューション・ユニット傘下のMFSストラテジー・アンド・インサイト・グループのものであり、MFSのポートフォリオ・マネジャーおよびリサーチ・アナリストの見解と異なる場合があります。これらの見解は予告なく変更されることがあります。また、これらの見解は情報提供のみを目的としたもので、投資助言、銘柄推奨、あるいはMFSの代理としての取引意思の表明と解釈されるべきではありません。分散投資は利益を保証するものでも、損失を防ぐものでもありません。予想は将来の成果を保証するものではありません。

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