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Big Mac1:債券の投資機会-正相関の世界で債券が果たす役割

本稿では、債券と株式の相関が高い環境下で、債券が果たす役割についてご説明します。

執筆者 

Benoit Anne
マネジング・ディレクター
インベストメント・
ソリューション・
グループ

債券と株式の相関は非常に高く、すぐに是正されそうにはありません。この状況への対応策は、債券を買い増すことです。相関の上昇はポートフォリオの総リスクの上昇を意味し、債券へのアロケーションを増やすことでこの総リスクを抑制することができます。債券は、ポートフォリオの分散という点では有効ではないとしても、ボラティリティの分散という点では機能し続けるとみられます。この対策のもう1つの利点は、利回りが高水準にあるため、リスク調整後ベースの債券の魅力が引き続き高いということです。高相関の環境下でリスクを管理するもうひとつの方法は、投資機会をグローバル市場に拡大することです。異なる通貨・市場・地域へのエクスポージャーをとることで、ポートフォリオの分散に役立つ可能性があります。このグローバル・アプローチを最大限に活かすには、超過収益の潜在的源泉を利用することに長けたアクティブ運用会社に運用を委託することです。

当面の間、債券はポートフォリオに分散機能を果たすことはありません。現在の債券と株式の相関は、歴史的に非常に高い水準にあります。期間2年で見ると、相関係数は0.71で、1995年以来の高い水準にあります(図表1参照)。債券と株式の相関が高いということは、債券の分散効果が弱まっていることを意味します。また、相関とともにポートフォリオの総リスクが上昇していることを意味するため、高相関の世界では、リスク管理が運用プロセスの柱としてますます重要になります。

債券と株式の相関は今後も高止まりする見通しです。債券と株式の相関の急上昇は、米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めサイクルが間近に迫っていることが明らかになった2021年終盤に始まりました。FRBが世界の投資家の想定を超えるペースで利上げを行ったことで、相関は急激に上昇しました。

FRBの利上げサイクルは終わったかもしれませんが、債券と株式の相関が低下するとは限りません。MFSのマクロ・レジーム(体制)枠組みに基づくと、現在起きているマクロ・レジームの移行は持続的に高い相関関係をもたらす可能性が高いと考えられます。

2022年から2023年にかけてのFRBの利上げ局面で支配的だったマクロ・レジームは、いわゆる「FRBの恐怖」でした(図表2参照)。このレジームの下、金利は上昇、クレジットスプレッドは拡大しました。幅広いリスク資産が下押し圧力を受け、債券と株式の相関が高まる傾向がみられました。2022年、債券と株式はともに下落しました。

今後は、2022年と2023年のパターンとは逆に、QE(量的緩和)型、すなわちゴルディロックス(適温相場)型のレジームに移行する可能性が高いと考えられます。ゴルディロックス型レジームの下では、金利は低下し、信用スプレッドは縮小します。リスク資産も、中央銀行による流動性供給の拡大に支えられて堅調に推移する傾向があるため、債券と株式の相関は引き続き高止まりします。この移行は、FRBが緩和サイクルを近く開始するとの期待を反映してここ数カ月間続いています。FRBの利下げがまだ実施されていないことを踏まえると、ゴルディロックス型のレジームはしばらくの間継続する可能性が高いとみられます。債券と株式の相関はいずれ低下し正常化しますが、それは緩和サイクルが一巡する間近の2025年終盤までは起きないとMFSは考えています。緩和サイクルが完了すると、マクロ・レジームは再び移行し、今度は成長モメンタム型レジームか、あるいはおそらくFRBの恐怖型レジームのいずれかに移行すると見込まれます。

ポートフォリオのリスクを低減する必要性。逆説的ですが、債券と株式の相関が高ければ高いほど、ポートフォリオのリスクを低減する必要性が高まるため、リスク低減に適した資産クラスとしての債券の歴史的地位を踏まえ、債券へのアロケーションを増やすことが勧められます。言い換えれば、債券はポートフォリオの分散化には有効でないとしても、ボラティリティの分散には引き続き有効である可能性があります。高い相関関係が続いていた1990年代を例にとると、この期間中に債券へのアロケーションを増やすことで、ポートフォリオのボラティリティが低下し、リスク調整後リターンが改善しました(図表3、4参照)。

   

債券はリスク調整後ベースで魅力的。主要中央銀行の金融緩和姿勢、ソフトランディング(軟着陸)シナリオが実現しそうな状況、多くの国で続くディスインフレ・プロセスを背景に、マクロ環境は債券に有利に働いています。世界の債券サブアセットクラスの多くで現在の利回りが長期的なリターンを大きく上回っていることから、債券は今後、高いリターンをもたらす可能性があります。投資期間が比較的長期の戦略的投資家にとって本当に重要なのは総利回り評価であり、それは依然として好ましいものとなっています。歴史的に、当初利回りとその後のリターンの間には強い関連性がみられます。グローバル総合指数の利回りは現在3.82%ですが、過去を振り返ると、同じような投資開始時の利回りレベルであれば、その後5年間の年率リターンの中央値は6.44%(3.66%~7.68%のレンジ)でした(図表5参照)。

相関管理戦略としてのグローバル化。国内投資を非常に重視してきた投資家は、投資機会 をグローバル市場に広げることでメリットを得られる可能性があります。グローバル投資 は債券と株式の高い相関という課題への直接的な対処法ではありませんが、複数の地域、国、 通貨へのエクスポージャーを取り入れることで、ポートフォリオの分散を高めるのに役立 つ可能性があります。これまで見てきたように、グローバル債券の為替ヘッジ付きエクスポー ジャーは、特に米国や英国のように自国市場の金利が高い場合には、利回りの向上とポー トフォリオのボラティリティ低下の両方をもたらす可能性があります(図表6参照)。

グローバルでアクティブな運用を推奨する根拠。MFSの考えでは、グローバル債券の投資機会を最大限に活かすには、為替管理からデュレーション・ポジショニング、ヘッジ戦略、資産・セクター配分、グローバル銘柄選択に至る複数の超過収益の源泉を利用することができるアクティブ・マネジャーに運用を委託することです。歴史的に見ると、過去20年間の超過収益は平均83ベーシスポイント(運用報酬控除前)と優にプラス圏を維持しており、グローバル債券のポートフォリオ運用でのアクティブ・アプローチが付加価値をもたらし得ることを示しています(図表7参照)。

全体的に見て、現在のグローバル市場の重要な特徴である債券と株式の高い相関は、債券へ のアロケーション増加に相反するものではないとMFSは考えます。実際、高まるポートフォリオ・ リスクを管理しようとすると、債券へのアロケーションが増加する可能性があります。 

 

 

1「Big Mac」(「ビッグなマクロ経済」を意味します)は、世界の債券やマクロ経済環境に関するトピックを取り上げるグローバル債券レポートです。

債券に投資する場合、発行体、借り手、取引相手もしくはその他の支払義務を負う主体、原資産の信用力の低下、あるいは経済的状況、政治的状況、発行体固有の状況もしくはその他の状況の変化による結果として、またはその影響により、価値が低下することがあります。特定の種類の債券は、これらの要因による影響が大きいことから、ボラティリティが上昇する可能性があります。また、債券には金利リスクが伴います(金利が上昇すると、価格は下落します)。したがって、金利上昇時にはポートフォリオの価値が減少する可能性があります。

出所:Bloomberg Index Services Limited. BLOOMBERG®は、Bloomberg Finance L. P. およびその関連会社(以下、総称して「ブルームバーグ」)の商標およびサービスマークです。BloombergまたはBloombergのライセンサーは、Bloomberg Indexのすべての所有権を有します。Bloombergは、本資料を承認もしくは保証するものではなく、本資料に記載された情報の正確性または完全性を保証するものでもありません。また、本資料から得られる結果について、明示または黙示を問わず一切の保証を行わず、法律で認められている最大限の範囲において、一切の責任を負わないものとします。

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当レポート内で提示された見解は、MFSディストリビューション・ユニット傘下のMFSインベストメント・ソリューション・グループのものであり、MFSのポートフォリオ・マネジャーおよびリサーチ・アナリストの見解と異なる場合があります。これらの見解は予告なく変更されることがあります。また、これらの見解は情報提供のみを目的としたもので、投資助言、銘柄推奨、あるいはMFSの代理としての取引意思の表明と解釈されるべきではありません。予想は将来の成果を保証するものではありません。

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