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生活必需品セクターの変容

本稿では、生活必需品セクターにもテクノロジーの影響が及んだ結果、勝者と敗者を見分けるには綿密なリサーチと微妙な差異に着目することが必要、とのグローバル・インベストメント・ストラテジスト Robert Almeidaの見解をご紹介します。

執筆者

Robert M. Almeida, Jr.
ポートフォリオ・マネジャー
兼グローバル・インベストメント・ストラテジスト

概要

  • 生活必需品は、モバイル機器が普及するまでは利益状況の予見性が高いセクターでした。
  • テクノロジーが生活必需品セクターに変容をもたらし、競争の機会が広がりました。
  • 勝者と敗者を見分けるには、綿密なリサーチと、微妙な差異に着目することが必要です。

予見性の高い時代から...

テクノロジーとモバイル機器は我々の生活に膨大な影響を及ぼしています。中でもテクノロジーの影響が最も色濃く表れているのは小売業です。多くの実店舗がテクノロジーを導入するか、それともビジネスをあきらめるかを余儀なくされています。また、小売業ほど顕著ではないものの、生活必需品にもテクノロジーの影響が及んでいます。

生活必需品は何十年もの間、比較的安定した顧客需要を享受し、また製品が廃れるリスクも比較的低い状態が続いてきました。飲食は人々が生きてゆく上で欠かせないものであるため、生活必需品は他の多くの産業と比較すると販売や利益の循環性が低く、また、大手の定番ブランドが何十年もの間、商品棚スペース、消費者の支出、ひいては業界の利益において高いシェアを占めてきました。他セクターに比べ新規参入が少なかったことからイノベーションの必要性もほとんどありませんでした。こうした状況が参入障壁となり、生活必需品セクターは一般的に、他のビジネスと比べて収益サイクルが長期的に安定しており、また予見性が高いとみなされてきました。

ただし、それはテクノロジーによる変容が起きる前の話です。

eコマースの普及以前は、ブランドを創設するのは簡単なことではありませんでした。時間がかかる上に、多額の広告費を要しました。老舗企業となれば、その資金力を利用してブランド力を維持し、消費者における高いマインドシェアと同社製品への高い支出シェアを確保することができた上に、柔軟なバランスシートを活かして販売店舗の商品棚スペースの縮小を防ぐことも可能でした。その結果、規模が規模を生んでいったのです。総じて、安定した需要のある生活必需品分野で確立されたブランド力は、景気の浮き沈みに関わらず、また広告費や販促費の支出能力のある企業であれば、その多くで長期にわたり潤沢なキャッシュフローをもたらし、それが投資家にとっての長年の魅力となってきました。

...テクノロジー主導の創造的破壊へ

しかし、2000年代後半にソーシャルメディアが普及すると、状況は一変しました。テクノロジーはしばしば社会の非効率性やコスト摩擦を露呈させ、また、消費者の選択肢が増えることで変化への扉が開かれることから、デフレにつながる傾向があります。生活必需品業界もこの影響を免れることはできませんでした。

優れたアイデアを持っていながら広告費や商品棚スペースを確保する余力のない起業家も、ソーシャルメディアやeコマースのおかげで競争力を持つことができるようになりました。依然ブランドに力はあるものの、顧客のマインドシェアを崩すことも可能になりました。ソーシャルメディアは、特に消費者の目的や価値観の面で、消費者とブランドのつながりを強化する道を開きました。なかには、マス・マーケティングや広告ではなく、製品の信頼性が競争優位性となるケースもあります。生活必需品セクターでは、デジタル化も大きな変革要因となっています。消費者は価格や品質についてより多くの情報が手に入るようになり、選択肢も増え、参入障壁も下がりました。ただし、変化には課題と機会が伴います。

メリット・デメリットを受けた生活必需品

生活必需品のどのカテゴリーがメリットまたはデメリットを受けたかは文脈によるため概論するのは難しいものの、ファンダメンタル・リサーチで付加価値を得ることが可能です。例えば、食品は必需品、飲料は嗜好品ですが、新規参入企業が価格、品質、またはその両方で競争を挑んでいるため、各カテゴリーはプライベートブランド・リスクに直面しています。そのため、MFSのアナリストは、企業が属するカテゴリーのエクスポージャーを差別化することに多くの時間を費やしています。そして、自分の価値観に合致し、且つ自分のニーズを満たす製品であれば割高でも購入するという消費者志向を背景に、経済成長よりも速いペースで成長しているカテゴリーの関連企業を選好します。こうした消費傾向は特に美容や蒸留酒などのカテゴリーで顕著にみられます。また、「オケージョンの増加」によって一人当たり売上高の伸びているカテゴリーや、特定のニーズや欲求向けの製品を扱う企業も選好します。さらに、歯磨き粉や紙おむつなど、発展途上国における中間層の使用量増加の恩恵を受けている製品企業も選好しています。プライベートブランド・リスクに直面する可能性はあるものの、こうした企業はブランドへの信頼感が差別化要因になると考えます。健康への未知の影響がありうるブランドに消費者を振り向かせることは、新規参入の高いハードルになり得るためです。

結論

他のセクターや産業と同様、生活必需品セクターも好調な企業収益がバリュエーションを押し上げています。必需品への需要は不変ですが、消費者が何を買い、何に対して支出を厭わないかは変化しています。投資に際して、産業ごとの微妙な違いと、それを各個別企業にどのように適用するかを理解することは今や欠かすことはできません。そうした個別性が将来の企業利益、ひいては株・債券価格を左右する要因として存在感を増しつつあるためです。従って、生活必需品セクターにおける個別銘柄選択の重要性はこれまで以上に高まっているとMFSは見ています。

 

 

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