2024年11月
共和党トランプ氏、圧勝へ - 市場への影響
本稿では、米国大統領選挙の結果と市場への影響についてMFSの見解をご紹介します。
Michael Dembro
リード・ストラテジスト、ストラテジー・アンド・インサイト・グループ
Jamie Coleman
シニア・ストラテジスト、ストラテジー・アンド・インサイト・グループ
米国大統領選挙の結果、ドナルド・トランプ前大統領がホワイトハウスに返り咲くことになりました。上院は共和党が過半数議席を占め、下院でも過半数議席を占める見通しです。米国大統領が返り咲きを果たすのは1892年以来のことです。
税制
共和党が圧勝したことで、2017年減税・雇用法の条項は、すべてとまではいかなくともその大半が、2025年末の失効前に延長される可能性が大きく高まりました。また、トランプ氏は選挙運動中、社会保障給付金、サービス業従業員のチップ収入、時間外労働報酬への課税廃止を支持しました。国内製造業を対象に法人税率を現行の21%から15%に引き下げることを提案しました。
貿易
米国大統領は貿易政策の決定に関して大きな権限を有しています。トランプ氏は米国への輸入品に対し、他国が米国の輸出品に課しているのと同等の相互関税を課すことを主張してきました。また、米国への輸入品すべてに一律10%から20%、中国からの輸入品については60%の関税を課すことを主張していました。さらに、メキシコからの自動車輸入に関税を課すことも主張していました。
エネルギー政策
トランプ氏はエネルギーの国内生産強化を強く提唱しており、石油・ガスの生産・供給の障壁撤廃と発電所の新設を促すことを約束してきました。グリーンエネルギー移行に対する支援については現政権と比べかなり後ろ向きです。
雇用/移民政策
トランプ氏は輸入関税などを通じて製造業を国内回帰させることを目指しています。また、国内向け業務を国外にアウトソースする企業とは政府契約をしないことを約束しています。移民の 流入を削減し、不法移民を国外退去させる計画です。一斉に国外退去させると労働力が縮小しインフレにつながりかねないとの向きがある一方で、この措置は経済成長を下押しし、インフレ 圧力を弱める可能性もあります。
米国債利回り
前述した第2期トランプ政権で想定される政策ミックスは、すでに拡張的な米国の財政をさらに拡大させるものであるため、長期債を中心に米国債利回りの小幅な上昇につながる可能性があります。一方で、大幅な貿易規制の導入はいずれ経済成長の重しとなり、金利上昇を抑える可能性があります。ただし、財政がすでに脆弱であることを勘案すると、トランプ氏の型破りな政策ミックスに伴う先行き不透明感から、米国債の期間プレミアムの上昇など、投資家がより高いリターンを求めるようになるリスクが高まっていると考えます。
株式
法人税率の引き下げ、規制緩和、その他経済成長にプラスとなる政策は、概して米国株式の支援材料になると思われます。一方、非米国株式は貿易摩擦の悪化による逆風を受けると思われ、特に欧州とエマージング市場が大きな影響を受ける可能性があります。米国小型株は、国内志向であることと税率への感応度が高いことから、次期トランプ政権下では勝ち組となる可能性があります。また、化石燃料関連株と(規制緩和が期待される)金融株はトランプ勝利の恩恵を受けると考えられます。一方、グリーンエネルギー関連株を取り巻く環境は今後厳しくなりそうです。
為替
第2期トランプ政権下で予想される政策ミックスは、トランプ勝利を期待する向きから米ドルを押し上げてきました。貿易関税を課す国の通貨は課される国の通貨に対して上昇する傾向があるため、米ドル高は中期的に続く可能性があります。欧州、中国、メキシコがトランプ課税の対象であることから、ユーロ/米ドル、米ドル/人民元、米ドル/メキシコペソなどは注目に値します。地政学的な不安から、米ドル以外の安全な投資先を求める動きが生じ、金(ゴールド)が「トランプ・トレード」の恩恵を受けています。暗号通貨の投資家は、次期トランプ政権下での規制緩和を期待しています。
選挙結果は政治、経済、社会に大きな影響を与える可能性があります。しかし幸いなことに、権力の均衡は一個人や一政党のみに委ねられるのではなく、チェック・アンド・バランス(牽制と均衡)が機能するシステムに支えられています。様々な政治プロセスを経て、米国の経済と株式市場は世界最大規模に拡大してきました。選挙イヤーやその他の変化の時には、ニュースに惑わされないことが重要です。規律ある投資アプローチ、長期的な観点からの投資、賢明なリバランス計画を維持することが、他の年と同様に、この選挙イヤーにおいても重要です。
当レポート内で提示された見解は、MFSディストリビューション・ユニット傘下のMFSストラテジー・アンド・インサイト・グループのものであり、MFSのポートフォリオ・マネジャーおよびリサーチ・アナリストの見解と異なる場合があります。これらの見解は予告なく変更されることがあります。また、これらの見解は情報提供のみを目的としたもので、投資助言、銘柄推奨、あるいはMFSの代理としての取引意思の表明と解釈されるべきではありません。
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